欧州リテールの現在地を知る──Tech for Retail 2025(Le Salon Européen du Retail)
2025年11月24日・25日の二日間、パリ・ポルト・ド・ヴェルサイユ(Paris Expo Hall 4)で、欧州最大級のリテール×テクノロジー展示会「Tech for Retail 2025 – Le Salon Européen du Retail」が開催されます。欧州市場では、ここ数年で小売・流通のデジタル化とサステナビリティの動きが急速に進んでおり、その最前線を実際に体感できる場所として、世界中からブランド企業、流通チェーン、ITベンダー、スタートアップが集まります。日本からも視察に訪れる企業が増えており、「欧州リテールの“いま”を理解する上で外せないイベント」として定着しつつあります。

■ このイベントが目指すもの:欧州小売の「変革の交差点」
Tech for Retail の特徴は、単なる展示会ではなく、欧州リテール業界が抱える課題と未来像を議論する“知のプラットフォーム”である点にあります。欧州では顧客体験(CX/UX)の高度化、店舗デジタル化、データ活用、AI導入、サステナビリティ対応といったテーマが同時並行で進んでおり、こうした動きを実際のソリューションとして紹介する場が本イベントです。
特に今年は、AIを活用した需要予測や店舗オペレーションの自動化、オンラインとオフラインの完全統合を目指すオムニチャネル戦略、循環型経済を前提とした物流や在庫管理など、実務レベルでの「変革」が中心に据えられています。欧州独自の規制や文化背景を踏まえた上での取り組みが数多く紹介されるため、日本とは異なる小売の視点や優先順位を学べる貴重な機会です。
■ プログラムの見どころ:最新ソリューションと200以上のカンファレンス
当日は400社を超える出展企業がブースを構え、ブランド企業の実例紹介や店舗活性化の取り組みを発表するセッションが200以上予定されています。会場全体は、IT・データ分析、eコマース、CRM、マーケティング、物流、決済、店舗運営、RSE(CSR/ESG)など、リテール業務のすべてを網羅する構成。ヨーロッパ各地のチェーン店やブランドの経営者が登壇し、デジタル化によって実際に何が変わったのか、どのように投資回収しているのかといった実践的な内容が紹介されるため、事例調査としても高い価値があります。
会場では、スタートアップ専用エリアや、テーマ別に展示を回遊できる「ジャーニー」形式の案内も用意されているため、効率よく最先端のソリューションに触れることができます。特にAI関連の展示は昨年以上に拡大が見込まれ、来場者が最も注目する分野の一つになるでしょう。
■ 著名スピーカー紹介
本イベントには、欧州を代表するリテール/テクノロジー界のリーダーがキー・スピーカーとして登壇予定です。例えば、開幕基調講演には Maurice Lévy 氏(Publicis Groupe 名誉会長)が 11月24日に「Main Stage」で登場します。
また、フィンランド発の決済テック大手 Klarna の共同創業者兼CEOである Sebastian Siemiatkowski 氏も keynote 講演者に名を連ね、キャッシュレス/デジタル決済がリテールに与えるインパクトを語る予定です。
さらに、ラグジュアリーブランドを展開する LVMH グループのグループITディレクター Franck Le Moal 氏、化粧品/ビューティー分野で欧州をけん引してきた Sephora(EME地域)社長 Catherine Spindler 氏なども、デジタル変革と小売体験変革をテーマに登壇予定です。
このようなスピーカーの顔ぶれを見ると、単なる“テクノロジー展示会”を超え、「経営トップ・チェーン経営者・ブランド責任者による未来戦略発表の場」になっていることが分かります。日本の参加者にとっても、同じリテールチェーンやブランドの視点で“何を考え、どう動いているか”をリアルに知るチャンスとなるでしょう。
■ 日本企業が参加する意義:欧州トレンドを“未来のヒント”として持ち帰る
日本企業や日本のリテール関係者がこのイベントに参加する意義は大きく、単なる海外視察以上の価値があります。
第一に、欧州で進むサステナビリティとデジタル化の流れは、日本のリテールがこれから直面する課題と強く重なります。特に欧州発の環境規制やプライバシー保護の潮流は、数年後には日本でも求められる可能性が高く、事前にその潮流を把握しておくことは経営戦略上の強みになります。
第二に、欧州のブランドは“顧客体験”を極めて重視し、店舗・ECを含むあらゆる顧客接点の統合に積極的です。こうした取り組みは日本でも注目が高まっていますが、欧州の実例は非常に具体的で、導入効果や課題が明確に語られるため、自社の施策と照らし合わせて検討する際の参考になります。
第三に、欧州ソリューションベンダーとのネットワークづくりです。物流、決済、データ基盤、AI分析などの分野では、日本ではまだ知られていない革新的企業が多数出展しており、将来の協業、技術導入、欧州展開の足がかりになる可能性があります。国際的な視点を持つ日本企業にとって、こうした出会いは大きな財産になるでしょう。
■ リテールビジネスの中での位置づけ:欧州市場の“縮図”としての展示会
Tech for Retail は、欧州における小売の最新潮流を「実務レベル」で見られる数少ない展示会です。北米のNRFが“グローバル全体の方向性”を大局的に示すイベントであるのに対し、Tech for Retail はヨーロッパ的なリアリティ──多国籍市場、多様な文化、環境規制、地域性の強い店舗運営──を踏まえた“リアルな解決策の集合体”である点が特徴です。
つまり、本イベントは欧州小売市場の「縮図」であり、各国のブランドやチェーンがどのように現場を改善し、どう収益性を上げ、どのテクノロジーに投資しているのかを、一度に把握できる場でもあります。グローバルリテールを学ぶ上で、非常に実践的な情報が得られるイベントといえるでしょう。
■ まとめ:日本のリテール変革に欧州の視点を取り入れる好機
Tech for Retail 2025 は、欧州リテールの“現在”と“未来”を体感できる貴重な機会です。日本のリテール業界は、人口減少や人手不足、店舗の再構築、デジタル投資の最適化など、さまざまな課題に直面しています。欧州も同じ課題を抱える中で、それらをどのように乗り越えているか──そのヒントがこの展示会には詰まっています。
最新のソリューションを見て、欧州ブランドの実践を学び、将来のパートナーになり得る企業と出会うことは、日本のリテールビジネスにとって大きな財産となるはずです。
